「住職の雑感」ページに 「延寿」381号に掲載の「新緑」を掲載しました。
こちらからも直接ご覧いただけます。
人にはそれぞれ向き不向きがあり、好き嫌いもあります。教育の中では、集団生活や行動を通して規律を求め、我慢や頑張りも期待されます。全体の調和こそが良いことで優先されるべきものだと叩き込まれて来ました。私が生まれ育ち、今は住職をしている本立寺では、昔から寄宿生活での僧侶養成教育をし現在でも行っています。私は割りと決めたことを通そうとします。他に強要しているつもりはありませんが、立場もあってかそうは見えず、周りを窮屈にしているのかもしれません。三月には三年間の決められた期間を経て、二十歳台の二人が卒寺し、四月からは五十歳台の僧侶希望者が入って来ました。
桜の花が散り始めると、落葉樹からはどこからその力が湧き出てくるのだろうかと、不思議に小さな葉が一斉に姿を現します。常緑樹でも冬の間も枝にしがみついていた葉がついに落ち、新緑が目立つようになります。地面からも草が顔を出し、本当は名前があるだろうに「雑草」と十把一絡に格闘を始めます。私は「暇」を好まず、たいした娯楽もせずに、全てを「仕事」として詰め込んできました。
私の書斎からは池が眺められ、時には幼児の声も聞こえてきます。そこに鴨の夫婦(つがい)がやって来ました。ときには泳ぐこともありますが、大半の時間を小岩に座り陽向ぼっこをしているようにしか見えません。ここに至るまでには卵からヒヨコになり親から守られ、そしてついには巣立ち苦闘があり、幸いにも伴侶に恵まれた姿なのでしょう。彼らにとっての一大事は、親がしてくれたように抱卵し、次世代に命を継なぐことに決まっています。草にしても同じことで、全ての生命は継承こそが最も大切なことであって、他はありません。「天の三光に身を温め 地の五穀に魂を養う」のです。私は五十五歳になりました。同年輩の社会人はラストスパートで第四コーナーを廻りました。まだ若いんだから、とも言われますが、真に受けずスパートをかけてまいります。
家に居ることが多く、体を動かす機会が減った方も多いでしょう。どうぞ体調の変化にお気をつけください。延寿院の自然は元気です。いらしてみてはいかがでしょうか。
「延寿」381号掲載
本立寺にて3月27日に行われた、
日蓮第聖人御降誕800年記念 音楽大法要・宗祖御真骨御開帳の様子をご覧いただけます。ご家族みなさまで御楽しみください。
本日執り行っております、「宗祖日蓮大聖人 御降誕800年記念法要」のYouTubeライブ配信ページを変更させて頂きました。これまでホームページやLINE、ご案内に掲載していましたものでは御視聴頂けませんのでお気をつけください。
急な変更となりますがご了承ください。下記のURLから御視聴ください。
日蓮聖人がお書きになられた『妙一尼御前御消息』に「冬は必ず春となる」という一節があります。季節は行きつ戻りつしながらも必ず廻るということと、雌伏している時こそが大切なのだと言うことを教えています。私は小さい頃から計画的でした。例えば試験前になると部屋や勉強机の片付けをし、まず場を整える作業をしないと気が済みませんでした。次には一週間の過ごし方をこの日の何時から何時までは数学のここをするという風に表にします。これくらいしとけば大丈夫であろうと算段をつけるわけです。担任の先生や親兄姉から準備法を教わったのでもありませんが、とにかくそうして来ました。「三つ子の魂百までも」で、その性癖は今でも変わっていません。むしろより周到になっているかもしれません。しかし、社会にあって仕事をする中では、自分の意図したようには上手くいかないことに気付くようになりました。自分一人の努力ではどうにもならない「縁(つながり)」の作用があるということです。思いの強さを如何に伝え共感してくれるかが大切になります。
私が住職に就任した平成三十年四月は、『日蓮聖人御降誕八〇〇年』までわずか二年十ヶ月のタイミングでした。まずは本立寺の日常に自分の感覚を慣れさせることから始め、九月に『法燈継承(住職交代)式』という内外への披露を実行することを目標にしました。初年度を無難に終えると、分析をし課題の抽出をし、現状の問題と近未来の課題に対して処方箋を作り、同時にチーム作りをしなければなりません。従来から寺に関わっている者の意識を高め、お檀家の参画を促します。停滞していた「世話人会」の名簿整理をし、新たに就任していただく方を募りました。本立寺がどのように見られてきたのか?まずは寺に来やすくしよう!私が意図したことも、しなかったことも、全てが良縁となって新しい風がビュンビュンと吹いて来てくれました。
今月、一年の延期を経て京都より日蓮聖人(=御真骨)に御来駕(=出開帳)いただき『八〇〇年』が行えることは奇跡的なことです。総代さんなど大勢の人たちと「オンライン」「オフライン」の行事として成功するよう準備を進めています。どうぞ振るってご参加ください。
「山風」 90号 掲載