宿縁

 今夏は大変な暑さで、よく救急車のサイレンの音が聞こえていました。その酷暑に終わりを告げたのが台風21号で、その翌日には北海道胆振東部地震が発生したのは、何かの因縁なのでしょうか?

 先日九月十日には四月から住職に就任した本立寺の住職交代式(法灯継承式という)を行いました。安藤、佐藤総代や山本、井上世話人さんら延寿院のお檀家さんが入山行列をともにしていただき、大変に勇気づけられました。本立寺は檀家が900軒(その内で市内在住者は80%で地元密着型)、創立から450年と歴史が古く、寺で修行をしている僧侶は5人、毎日ではなくとも掃除をしてくれる人が3人いて、地方都市の日蓮宗寺院では規模の大きな寺となります。毎月3回の信行会(参加者20~40人)、月1回の写経会(10人位)、月2回のヨガ教室(5人位)を行い、年4回檀家向けに会報を作っています。

 「因縁果報」「因果応報」という仏語がありますが、物事には原因・結果・報いがあって、「・」が狭義の縁で、広義には過去・未来も包摂して縁ともいえます。台風や地震はもちろん天災です。たまたま和歌山や大阪や兵庫を通過した。たまたま北海道で大地が揺れただけなのかもしれません。

 法灯継承式では400人の参列者をお迎えするために、その当日も境内を掃いていると、曼珠沙華が地面から茎を伸ばしているのを見つけました。一本見つかると、ここかしこにもう伸びていることに気が付きます。この数年お彼岸(今年は20日から)の10日前から咲くようになりました。人の生活が、自然に大きな過度な影響を与えてきた結果なのではないでしょうか?地震によって電気が止まりました。自然災害の中にも人災はありませんか?

 四つの寺の住職をし、公益財団法人事務所長、NPO法人代表などなど、私が関与している団体・人々が、宿縁によって「シンク」「ループ」「ワーク」するように、益々働きかけてまいります。どうぞ関心をお寄せいただきご賛助ください。

「延寿」359号 掲載

ヴァガボンド

 九月十日に住職を引継ぐための儀式(法燈継承式)を滞りなく行うことができました(本紙二頁参照)。日蓮宗から辞令が下りたのは三月三十一日で、実際に職に就いたのは四月十二日でした。年に一度の役員会、毎月の定例行事、日々の事務や法務などを、従前から勤める僧侶や職員に支えられ神輿に乗るように進めています(ありがたいことです)。

 着任して初めにしたことは、本堂の燭火を洋から和へ変えることでした。和ロウソクは洋ロウソクよりも燈に動きがあり、急に立ち上がる炎は、人間に心地よさや快適を与えるとされる1/fのゆらぎで、背景に映す陰影とともに「心のやすらぎ」をもたらします。

 さて、住職とはどのようにあるべきでしょうか。寺に居る、仏事を主宰する、寺の維持に責任をもつなどなど。しかしながら、最も大切なことは『法華経』を弘通することへの専心。そしてそれには僧俗いずれからも支援者・共感者を得、弟子を養い、継承者を得る努力をし続けなければなりません。となると、寺に逼塞しているわけにもいかず、むしろヴァガボンド(放浪者)の気分を持ち続けるべきではないか、と私は思うのです。寅次郎は諸国で露天商を生業とし、時折、柴又の「寅屋」に帰ります。回りの人たちも跡取りとして遇し、妹サクラの夫ヒロシが立場を奪うことはありません。とてもとても寅さんになれるわけもありませんが、寺や町へ外からの空気を吹き込み、安心で寛げるお寺作りを行ってまいります。

 お檀家の方々には寛容に、どうぞよろしくお願いいたします。

(本立寺主催の旅行案内【山登り】【荒行堂ご祈祷】を同封しました。一緒に旅行に行きましょう)

「山風」76号 掲載