NPO会報によせて

 秋の訪れを感じる一つに金木犀があります。五感といって人には五つの感知器があるとされ、眼・耳・鼻・舌・身の一つである鼻が秋の香りとして感知するのです。そして同時に、夏の間に蓄えた体の中のほてりと空気がもたらす秋冷との闘いも肌(身)が感じています。日々刻々の季節の変化と、人にもある経年変化と、積み重ねてきた経験に基づく脳の記憶が、行動を前進させていきます。金木犀のオレンジ色の小さな沢山の花から発する香りは、子供の頃の楽しい思い出と一致しています。延寿院にはペットのお墓の前に植えられていますので、すぐに気付くことでしょう。

今、多摩の山ではナラ枯れが流行しているようです。業者さんに説明を受けたところ、里山には人間によって楢の木が植えられ、落葉すると落ち葉を集めて、畑への肥料とし、三十年ほど経つと伐採し、「薪」や「炭」にして町場に売りに行っていたそうです。それが家庭の燃料革命によって消費財としての役割が無くなり、山は放置され多くが太く高く育っていきました。その太い木を選ぶように虫が入り、枯らしてしまうのだそうです。延寿院では何本かのコナラの大木を切りましたが、被害の範囲は広くとても手が回らないそうです。人間にとっては困ったことなのでしょうが、人の営みの変化が引き起こした現象とも言えます。自然は全てが繋がり、全体として上手に機能しています。人もその一部に過ぎないことを改めて感じました。切った幹や枝は適当な長さに揃えて軒下に二〜三年寝かせておけば、いい薪になってくれます。数年後の冬の暖となってくれることが楽しみになりました。

NPO法人 ロータスプロジェクト代表
及川一晋

「LotusNews」41号に掲載