八王子の雪

 二月十日は朝から雪が降り、私は延寿院に行くことをあきらめ、本立寺の境内や塀の外の歩道の雪かきに勤しみました。特に翌朝の凍結が怖いので、降り続く中で無意味とも思われるかもしれませんが何度も行います。比較的広いお寺なので、接する歩道は南側と北側にそれぞれ端から端まで約七十メートルあり、振り返るとまた白くなっています。翌日は幸いにも大変いいお天気で、お天道様のお陰でみるみると雪が溶けてくれました。前日にはできなかった旧参道(自動車が通る公道となっている)の雪かきを始めました。土曜日で建国記念日でもありましたが、法事の一軒目は十一時からと遅かったので、二時間は作業ができます。沿道にお住まいのご近所さんがわざわざ出てこられて「ご苦労さま」「助かります」と声を掛けてくれるのは嬉しいことです。家の前だけをすればいいという風潮や、しなければならない気持ちはあってもままならないという方もあります。それぞれの事情でできることを行なっていけばいいのだと思っています。

 翌々日は日曜日で、これまたとてもいいお天気でした。雪当日のニュースでは何度も八王子駅のロータリーが映され、高速道路の八王子以西が通行止めとの報道でしたから、延寿院はさぞや大変なことになっているだろうと、少しワクワクしながら、今シーズン新調したスキーウエアの上下を着込み長靴を履いて出かけました。秋川街道には雪は全く残っていません。スイスイです。それでも侮れません。延寿院に入る急坂は日陰なのでツルツルに違いありません。注意深く左折しましたが、案に反して全く危なげありません。駐車場に自動車を停めて雪かき道具を下ろし、「さあ やるぞ」と階段を上がっても日陰のところ以外には全く雪は残っていませんでした。路のコンクリート床や敷石が少し湿っているところは溶けたばかりなのでしょう、枝や小枝がたくさん落ちていました。重みで折れ雪と共に落ちたに違いありません。紅葉や桜にとっては幹を残し生き続けていくためにはいたし方のないことなのです。白梅の香りが美しい空気をより一層高貴にしてくれている境内を、一本一本の枝を拾い清めてまいりました。もう春ですね。

「延寿」386号掲載