謹賀新年

 春の始の御悦びを申し上げます

 何の根拠もありませんが、「コロナ禍」が収束したような気分になっています。「非常事態宣言」は九月三十日に解除され、リバウンド防止のための施策も段階的に現状を確認しながら緩和されてきました。日本だけがなぜか鎖国をしているように安穏に恵まれていることが不思議でなりません。それでも、この状況が始まってから既に丸二年が経ち、換気は常に必要でしょうが、人と人との接触をいつまで制限し続けなければならないのかと、贅沢にも考えてしまいます。

 夕方から一人で呑みに行くことが全く無くなっていましたが、久しぶりに出かけたところ、常連さんたちと会い、お互いに知ったもの同士で飲むのは安心だよね、となりました。甲州街道の並木がきれいですよね、と会話が続きます。昔の八王子は十一月中には落葉していたんじゃないかな?暖かくなったねと。この二年の様子から、二〜三十年の話しになり、さらに、太平洋戦争開戦から八十年だってねとなりました。コロナで萎縮した見方から開放され、過去を振り返り、未来の僥倖を想像する元の生活に一時ですが戻れたようでした。

 個々人の自由を尊重する態度が家族の形態をも変えてきました。日々の暮らしの中では好都合なことが多いようにも思います。しかし、いつ起こるともわからない災害時のことを思うと、日々の生活から培われる「共助」がないと、「自助」や「公助」だけではどうにもなりません。ソーシャルディスタンスという言葉が一般化した今、改めてお寺こそがいい距離感の場となり、僧侶からいいお節介ができないかと考え、他者を仲間として身近に感じる空間を作っていきたいと思っています。

 この原稿は皆さまが穏やかに新年を迎えることを祈りつつ、十二月十二日に書いています。元旦から十日間の「七福神めぐり」にはお寺におりますので、ご挨拶をさせていただきます。

「山風」 89号 掲載